テニス脳ト

息子のテニスを通じて思ったことや感じたことを書いています。日本や世界のプロテニス選手を応援しています。

引き出し

レゴが外部の試合に出始めた頃のことです。

まだ小学4年生の頃だったと思います。

大会を運営していたクラブのヘッドコーチが私に話かけてきました。

このコーチは実績のあるジュニア選手を多く育ててきた方です。

そのクラブはプロ選手を何人も輩出しています。

 

「お子さんは試合にどのくらい出ていますか?」

ー 月に2回くらいです

 

「なぜお子さんを試合に出しているのですか?」

ー 試合経験を積ませたいからです

 

「なぜ試合経験を積まないといけないのですか?」

ー 試合に慣れてもらったり、試合運びや戦略を覚えてほしいからです

 

「試合運びや戦略は練習でも十分学べますよ」

ー ・・・

 

正直、ちょっとムッとしました。

だったら大会なんか開催するなよって(笑)

 

ー じゃあ、あんまり試合に出なくてもいいのでしょうか?

「試合はたくさん出た方がいいと思いますよ」

 

当時、テニスのド素人だった私にはこれ以上返す言葉がなく、苦笑いして黙ってしまいました。

 

コーチはニコニコしながら

「引き出しを増やすためです」

ー 引き出し・・・ですか?

 

コーチは引き出しの意味を丁寧に教えてくれました。

 

 

テニスは会場、サーフェス、相手がすべて同じという条件で試合することは少ないです。

ほとんどは違う条件で試合することになります。

例え同じ相手で同じサーフェスだったとしても、天気や風、季節、自分の調子などの条件が加わることで、前回の対戦とは全く違う試合展開になることも多いです。

そこで重要になるのが引き出しをどれくらい持っているか?ということになります。

 

試合の中では様々な条件下で様々な場面に遭遇します。

その時に自分はどういうことをすれば勝利に近づくことができるのか?

逆にどういうことをしてしまったら敗北につながってしまうのか?

どの引き出しをあけるのかで試合の流れが大きく左右します。

 

引き出しはこれまで自分が経験してきた中でしか作ることができません。

たくさん試合をすればするほど引き出しは増えていきます。

引き出しはたくさんあればあるほどいいです。

苦しい場面では特に引き出し(の中に入っている経験)が役立ちます。

 

「引き出し=経験」ということなのでしょうけど、あえて引き出しという言葉を使っていることに、単なる経験だけではないという意図が感じられます。

 

「あなたのお子さんは何年生くらいから試合に出ていますか?」

ー 今です(小4の終わりくらい)

 

「少なくとも小学生の間、もしかしたら中学生まで、小1、小2くらいから試合に出ている子との引き出しの数は埋まらないかもしれません」

 

コーチはそう言ってさらに説明を続けてくれます。

 

小学生くらいまでは、試合をすればそのまま引き出しになっていくことが多いので、引き出しはどんどん増えていきます。

1年、2年の差は大きく、早く試合に出始めた子との差はなかなか埋まりません。

まだ身体が成長途中で身体能力と技術の差がそれほど大きくはない12歳以下や14歳以下では、引き出しの数が試合の勝敗を分けることが多いです。

 

例えば試合で2-5で負けそうになっている場面があったとします。

強い小学生ってそこから何を考えると思いますか?

過去に大逆転できた試合を思い出すんです。

それがいくつかあった場合、今の対戦相手のタイプと近い試合を思い出します。

それと同じことをやってみます。

負けそうになるといきなりロブばっかりになって徹底的に守る子って結構いますよね。

それがその子にとって負けないための引き出しなのです。

これを意識的にやっている子は少ないと思います。

無意識に引き出しをあけているんです。

 

中学3年生や高校生にまでなってくると、ある程度引き出しが揃ってくるので、ここからは身体能力と技術の差の影響が大きく出るようになってきます。

ただ、中学生や高校生からテニスを始めた子、いくら運動神経が良くても、小学生の頃から毎週のように試合に出ていた子との引き出しの差はとても大きく、なかなか埋まらないです。

だからどんなに運動神経が抜群の子でも、高校生からテニスを初めて全日本ジュニアに出るなんてことはほとんど不可能に近いんです。

そういう意味では、ベイビーステップは現実的じゃないです。

どんなに頭が良くても知識だけでは引き出しは作れませんから。

まあ、漫画の話なのでね(笑)

 

コーチは最後にこうアドバイスしてくれました。

 

お子さんにはどんどん引き出しを作る機会を与えてあげてください。

試合後には、どんな引き出しができたかを一緒に考えてあげてください。

なんで負けたかを一方的に問い詰めるのではなく、こういうことをしたから負けてしまったかもしれないねと話し合ってください。

勝った時も喜んで終わりではなく、どういう場面でどういうショットを打ったから勝ったとか、もしあそこで違ったショットを打ってたらどうなっていたのか、と振り返ってください。

小学生の頃は試合を自分で振り返って引き出しを作ることが苦手な子も多いので、お父さんやお母さんが一緒に引き出しを作ってあげてください。

 

 

この引き出しという言葉が私には刺さりました。

試合経験という言葉だけで片づけられがちですが、引き出しとして捉えてみると、子供の試合の見方も変わってくるような気がします。

 

レゴの引き出しはどのくらいできたかなあ